高分子複合材料のトライボロジー
PTFE (四フッ化エチレン樹脂)は摩擦係数が低いことで知られている.これは,摩擦過程のせん断変形により配向して薄膜となった PTFE が層状固体潤滑体に似た性質を持つためである. しかし,トライボマテリアルとして用いた場合,耐摩耗性が著しく劣るため単体で使用されることは少なく,二硫化モリブデン(MoS2)や二硫化タングステン(WS2)等の固体潤滑剤やガラス繊維・炭素繊維を添加して使用されることが多い.高温潤滑材料のトライボロジー
潤滑油やグリースなどの一般的な潤滑剤は,高温環境では蒸発により使用できない.そこでグラファイトや二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤が用いられるが,それでも500℃以上の高温になると,酸化などにより潤滑性を失う.ボールジョイントのトライボロジー
ボールジョイントは,ボールを中心に回転・揺動してその機能を果たす.その際,ボールジョイントのホルダーとボールとの間の摩擦が問題となる.ホルダーの内側はポリアセタール(POM)シートで出来ており,摩擦はこのPOMシートと金属球の間でおきる. また,ボールジョイントの寿命は摩耗やPOMシートのへたり等が原因となっており,POMシートと金属の摩耗特性を知ることにより摩耗量の低減ができる.そこで,POMシートと金属球の摩擦において,負荷加重・摩擦速度・摩擦面の面粗度・潤滑剤等の摩擦係数と摩耗量への影響をしらべ,ボールジョイントの性能向上を図れないか研究をしている.フェノール樹脂複合材料のトライボロジー
フェノール樹脂は熱硬化性樹脂の一種で,硬化することで三次元網目構造を形成し熱変形を生じにくい性質を有することから,長時間高温雰囲気にさらしても硬度,機械強度等の機械特性の低下が少ない.このような特性から,近年,産業・輸送機器等の軽量化が要求される金属部品の代替材料として実用が進んでいる.トライボロジーの分野においては自動車のブレーキライニングに結合剤として古くから実用されているが,フェノール樹脂そのもののトライボロジー特性やその特性に及ぼす様々な摩擦機構に関する研究報告は多くない.